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犬の下痢が続くとき|原因の見分け方と、受診の目安

出典あり

芝生の上で座り、前を見上げている茶色の中型犬
Photo: Ildar Sagdejev (Specious)(CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons)

下痢が続くと、まず「何を食べさせたか」を思い返します。それも大事ですが、動物病院で最初に聞かれるのは別のことです。回数はどうか。量は多いか少ないか。粘液や血は混じっているか。

獣医療の資料は、下痢を小腸のものと大腸のものに分けます。MSDマニュアル獣医版の表では、小腸の下痢は回数が正常か少し増える程度で量が増え、大腸の下痢は回数がとても多く、量は減り、粘液が混じり、血は鮮やかな赤になります。同じ「下痢」でも、見ている場所が違います。

この記事は、家で見分けるところと、記録の付け方、そして待ってはいけないサインを整理します。診断と治療には踏み込みません。

下痢は2つに分かれる。小腸:量が増え、回数はあまり変わらない、黒い血。大腸:回数が増え、量は減り、粘液と鮮やかな赤い血

この記事で学べること

  • 小腸の下痢と大腸の下痢の見分け方
  • 便の状態を5段階で記録する方法
  • 急性と慢性の線(3週間)
  • 待ってはいけないサイン(黒いタール状の便、ラズベリージャム様、子犬)
  • 受診のときに持っていくもの

今日やることは1つ。 次の便を写真に撮ってください。色、形、粘液や血の有無は、言葉より写真が正確に伝わります。

記事執筆における出典

下痢は原因が幅広く、素人判断がいちばん危ない症状のひとつです。何をもとに書いたかを先に示します。

  • 小腸と大腸の見分け ── MSDマニュアル獣医版の表「Differentiation of Small Intestinal from Large Intestinal Diarrhea」。回数、量、切迫、しぶり、粘液、血の色、体重減少の7項目
  • 急性と慢性の線 ── 同マニュアル。3週間以上続く消化器症状は慢性腸症として扱われる
  • 急性出血性下痢症候群(AHDS) ── 同マニュアル。小型犬・トイ犬種に多く、「ラズベリージャムのような」大量の血便が突然出る。脱水が見た目に分かる前にショックに至りうる
  • 家での対応と受診の目安 ── VCA動物病院の解説。頻回の水様便が2日以上続くなら相談する、血便・嘔吐・元気消失・発熱・腹痛・食欲不振は急ぐ
  • 便の記録 ── 世界小動物獣医師会(WSAVA)の栄養ツールキットにある評価の考え方をもとに、5段階での記録をBAUDOGが整理しました

BAUDOGは診断をしません。 薬や絶食の判断も、この記事では扱いません。

数字で見る下痢

出典の記載
慢性の線3週間以上続く消化器症状は慢性腸症(MSDマニュアル獣医版)
大腸型の特徴回数がとても多い、量は減る、切迫としぶりがある、粘液が多い、血は鮮やかな赤
小腸型の特徴回数は正常か少し増える、量は増える、血は黒いタール状(メレナ)、体重が減ることがある
AHDSが多い犬種ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ピンシャー、ミニチュア・シュナウザー、ミニチュア・プードル、マルチーズ。年齢の中央値は5歳前後
受診の目安頻回の水様便が2日以上続くなら相談(VCA)

「何回したか」だけでは足りません。 回数・量・色・粘液の4つをそろえて初めて、話が前に進みます。

1. 小腸か、大腸か

家で見分けられるのは、回数と量と見た目です。

見るところ小腸の下痢大腸の下痢
回数正常か、少し増えるとても多い
1回の量正常〜多い少ない
切迫・しぶりないたいていある
粘液ふつうはないよく混じる
血黒いタール状(メレナ)鮮やかな赤
体重減ることがあるまれ

しぶりとは、出し終わったあとも力み続ける様子です。トイレから離れず、何度も同じ姿勢をとります。大腸の下痢では、これがよく見られます。

血の色が大事です。 鮮やかな赤は大腸や肛門の近くから、黒いタール状は上の方(胃や小腸)からの出血を示すとされます。黒い便は、見た目より急ぎます。

小腸と大腸の見分け方。回数、1回の量、しぶり、粘液、血の色、体重の6項目で比べる

2. 便を5段階で記録する

「ゆるい」「べちゃっとしている」では、伝わり方が人によって変わります。段階で記録すると、日ごとの変化が見えます。

段階状態
1硬く、ころころしている
2形があり、しっかりしている(ふつう)
3形はあるが柔らかい。拾うと跡が残る
4形がない。積もるように出る
5水のよう

記録するのは3つだけです。日付と時刻、段階の番号、気づいたこと(血・粘液・色・においの変化)。 そして写真を1枚。

3日分あれば、「良くなっているのか、変わらないのか」が数字で言えます。これが受診でいちばん役に立ちます。

便の5段階。1は硬くころころ、2は形があってしっかり、3は柔らかい、4は形がない、5は水のよう

3. 急性か、慢性か

MSDマニュアル獣医版は、3週間以上続く消化器症状を慢性腸症として扱います。時間の長さで、考えることが変わります。

  • 数日で終わるもの ── 食べ慣れないものを食べた、フードを急に替えた、環境の変化
  • 3週間を超えるもの ── 検査が必要な範囲です。食物への反応、腸の炎症、寄生虫など

「そのうち治る」で3週間を超えないでください。 慢性として扱う線が引かれているのは、原因を調べるべき段階だからです。

急性と慢性の線。数日で終わるものと、3週間を超えたら検査が必要な範囲

下痢のきっかけで多いのは、拾い食いです。散歩中に何を口にしているか分からない犬は、拾い食いをやめさせるを合わせて読んでください。食べてはいけない物は犬に危険な食べ物にまとめています。

4. 待ってはいけないサイン

次のどれかがあるなら、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。

サイン理由
大量の血便。ラズベリージャムのような見た目急性出血性下痢症候群(AHDS)の特徴。見た目に脱水が分かる前にショックに至りうる(MSDマニュアル獣医版)
黒いタール状の便上部消化管からの出血を示すとされる
子犬の下痢パルボウイルス感染では下痢が最初の症状のひとつ(VCA)
下痢に加えて、吐く・ぐったり・発熱・腹痛・食べないVCAが急ぐ状況として挙げています
水様便が2日以上続くVCAの受診の目安
水を飲まない、飲んでも吐く脱水が進みます

小型犬は特に急ぎます。 AHDSはヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、ミニチュア・プードル、マルチーズなどで多いとされ、進行が速い病気です。

待ってはいけないサイン。ラズベリージャムのような血便、黒いタール状の便、子犬の下痢、吐く・ぐったり、2日以上続く水様便

実践:受診までにやること

段階やること
すぐ便の写真を撮る。色と粘液・血が分かるように
毎回時刻、5段階の番号、量、気づいたことを書く
食べ物フードの銘柄、直近で替えたか、おやつ、拾い食いの心当たり
体体重を計る。水を飲んでいるか、吐いていないか
電話「何日目か・何回か・血や粘液があるか」を先に伝える

便そのものを持っていくと、その場で検査できることがあります。ラップやビニールに包み、冷やして持参してよいか、電話のときに聞いてください。

触られることに慣れていない犬は、診察台で大ごとになります。日ごろからあご乗せとステーションを短く練習しておくと、診察が早く終わります。

受診までにやること。便の写真、5段階の記録、フードと心当たり、体重と水、電話で先に伝える

うまくいかないとき

良くなったり悪くなったりを繰り返す ── 記録をつけると周期が見えます。フードを替えた日、おやつの種類、散歩コースも一緒に書いてください。

便の回数は多いが元気はある ── 大腸型の特徴に近い状態です。元気があっても、2日以上続くなら相談してください。

下痢のあとに便が出ない ── 出し切ったのか、詰まっているのかは家では分かりません。えずく、お腹を痛がるなら急ぎます。

フードを替えたら悪化した ── 切り替えが急だった可能性があります。MSDマニュアル獣医版は、回復期の食事を3〜5日かけて戻すとしています。

子犬で、ワクチンがまだ途中 ── 自己判断で様子を見ないでください。子犬の下痢は、それだけで受診の理由になります。

相談を考える目安

  • ラズベリージャムのような血便、黒いタール状の便 ── すぐ
  • 子犬の下痢 ── その日のうちに
  • 吐く、ぐったり、発熱、腹痛、食べない ── その日のうちに
  • 水様便が2日以上続く
  • 3週間以上、断続的に続いている
  • 体重が減ってきた

迷ったら電話で聞いてください。 便の状態を伝えるだけで、行くべきかどうかの判断がつきます。

最後に

下痢で大事なのは、どこの腸か、どれくらい続いているか、血の色は何色かの3つです。回数だけを数えても、話は前に進みません。

今日は、次の便を写真に撮って、5段階の番号をメモしてください。それが、いちばん短い道です。

日ごろの予防としては、拾い食いを減らすこと、フードの切り替えをゆっくりにすること。健康診断の考え方は犬の健康診断と予防にまとめています。

出典