噛む

子犬の甘噛み・噛み癖の直し方

出典あり

ぬいぐるみのおもちゃを噛んで遊ぶジャックラッセルテリアの子犬
Photo: Justin Veenema justinveenema(CC0, Wikimedia Commons)

子犬が手や服を噛むのは正常な発達です。子犬は口でものを確かめ、噛む力の加減を学んでいます。

今日やることは1つ。 噛まれたら遊びを止めて、10秒だけその場を離れる。これだけです。

目的は「噛ませない」ではなく「力加減を教える」

ここが多くの記事と違うところなので、先に書きます。

子犬期にやるべきことは、噛む行為を完全に封じることではなく、噛む力を加減できる口を育てることです。獣医行動学者のイアン・ダンバーは、これを「子犬が学べる最も重要なこと」と表現しています。

理由は将来にあります。どんな犬でも、痛い処置をされたとき、足を踏まれたとき、驚いたときに口が出る可能性はゼロになりません。そのときに加減を知っている口かどうかが、かすり傷で済むか大事になるかを分けます。

だから子犬期は、強く噛まれたら止める、弱ければ遊び続ける、という形で段階的に力を下げていくのが正解です。3か月の子犬に一切噛ませないよう育てると、加減を学ぶ機会そのものを失います。

噛んだら遊びを止める。手を噛んだら飼い主は背を向けて静止し、落ち着いたら噛んでよいおもちゃを渡す

叱るより「中断」が効く

大声で叱ったり、手を勢いよく引っ込めると、犬は「動くもの=もっと楽しい」と興奮して逆効果になりがちです。

効くのは**「強く噛んだら、楽しいことが止まる」**を教えること。これは子犬同士の遊びで起きていることと同じです。強く噛まれた子犬は鳴いて遊びをやめ、噛んだ側は「その強さだと終わってしまう」と学びます。

手順はこうです。

  1. 強く噛まれたら、その瞬間に遊びを止める。声は出さないか、短く「あ」程度
  2. 静かに立ち上がって、犬から離れる。10〜20秒
  3. 落ち着いたら戻って、遊びを再開する
  4. くり返すうちに「強く噛む=つまらなくなる」と学びます

離れる時間は短くて構いません。 長く無視すると、何に対する結果なのか分からなくなります。10秒で十分です。

「痛い!」と高い声を出す方法もよく紹介されますが、興奮して余計に噛む子が一定数います。 その場合は声を出さず、黙って離れるほうが確実です。愛犬がどちらかは、2〜3回試せば分かります。

布のおもちゃをくわえて遊ぶ子犬 Photo: Justin Veenema justinveenema(CC0, Wikimedia Commons)

噛んでよい物に誘導する

噛みたい欲求自体は満たします。噛んでよいおもちゃやガムを手の届くところに置き、手を噛もうとしたらそちらへ差し出してください。

手を引くのではなく、おもちゃを差し出すのがコツです。 引くと追いかけっこになります。

物をくわえて離さないときは出して(drop-it)、口に入れる前に止めたいときはやめなさい(leave-it)が役立ちます。どちらもマーカーがあると覚えが早くなります。手からおやつを受け取るときに歯が当たる子には、そっとを教えると口の力加減そのものが育ちます。

手を引くのではなく、噛んでよいおもちゃを差し出す Image: AI生成(BAUDOG)

月齢別の見通し

時期起きることやること
〜3か月口で何でも確かめる。いちばん噛む強く噛まれたときだけ中断。弱い甘噛みは許容
4〜7か月歯が生え変わり、むずがゆくて噛みたがる噛んでよい物を増やす。冷やしたタオルなども
7か月〜落ち着いてくる。残るなら習慣化中断を徹底。遊び方も見直す

歯の生え変わりの時期に一度ぶり返します。 順調だったのに急に噛みだしたときは、たいていこれです。異常ではありません。

音の鳴るおもちゃを噛む白黒の犬 Photo: Funkiestfarter(CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)

やってはいけない4つ

  • 口を掴む・マズルを握る。恐怖で一時的に止まっても、手が近づくこと自体を嫌がるようになります
  • 叩く・押さえつける。米国獣医行動学会は、こうした対立的な手法が恐怖と不安を生み、かえって攻撃を引き出すとして推奨していません
  • 鼻ピン・仰向け固定。同上。効果の根拠がなく、信頼関係を損ないます
  • 興奮させる遊びを長く続ける。引っ張りっこ自体は問題ありませんが、興奮が上がりきる前に終わらせます

叱って止めた場合、犬は「噛むと痛いことが起きる」と学びますが、加減は学びません。 将来いざというときに手加減できない口になります。

やってはいけない四つ。口を掴む、叩く、押さえつける、興奮させ続ける Illustration: BAUDOG(生成画像)

睡眠不足を疑う

子犬は1日18時間ほど眠ります。夕方に急にひどくなる甘噛みは、たいてい寝不足です。

このパターンに心当たりがあるなら、しつけより先に寝る環境を整えてください。クレートで落ち着ける場所を作り、日中もこまめに寝かせます。落ち着いて(settle)を練習しておくと、興奮した状態から自分で降りてこられるようになります。

改善しないときの見極め

多くは中断を2〜3週間続ければ目に見えて減ります。次のどれかに当てはまる場合は、家庭での対処だけで進めないでください。

  • 唸る、歯をむく、体を固くするなど、遊びではない様子がある
  • 食器やおもちゃを守って噛む
  • 触られること自体を嫌がって噛む
  • 皮膚が切れる強さで、加減する様子がまったくない

このときは獣医師か、陽性強化を用いる行動の専門家に相談してください。痛みが原因で噛んでいることもあります。

よくある質問

いつまで続きますか 7か月ごろまでに落ち着くのが一般的です。中断を続けていれば、それより早く目に見えて減ります。

子どもがいる家ではどうしますか 子どもは手を引いて逃げるので、犬が追いかけます。大人が中断役をやり、子どもとの遊びはおもちゃ越しに限定してください。

引っ張りっこはやめるべきですか やめなくて構いません。ただし始める前に出してを教え、興奮が上がりきる前に自分から終わらせてください。

1週間で取り組む

ケース別の手順と日ごとの進め方は、甘噛みをやめさせる1週間プログラムにまとめています。

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